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エブロのff-1スポーツには関係のない話だが、永らくモデラーをやっていると、好きなクルマを製作していても「やだなぁ」と思える作業がある。
それはディティールの細かい部分の作りこみである。
以前、スバル1300G スーパーツーリングを1/24でレジンで製作したときのこと、全体的なプロポーションのバランスやディティールをどうデフォルメしていくか、といったことは問題ないのだが、1300Gで問題なのは、あの複雑なフロントグリルである。
このときは、フロントグリルの周りの四角い枠をまず作って、それにプラ板をかまぼこ状に切って、真ん中を窪ませた縦桟をたくさん作って、先述の四角い枠の中に並べていき、真ん中の横桟を組み合わせて、フロントオーナメントを乗せて型を抜こうと思ったのだが、1/24ではこれが細かすぎて、なかなかうまく抜けない。
そこで結局、そうやって作ったフロントグリルの元型をモデルに組み込んで送り出したのだが、前回のスバル1000のフロントグリルも、横桟を裏から4本の縦桟で支える単純な形状に見えるが、よく見てみると、その横桟は現在のビレットグリルのように単純に角棒を並べたものではなく、きちんとした形状を持ったプレス部品の組み合わせであることが分かる。 |
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そんな訳で、スバル1000/ff-1の一連のシリーズの中では、A14型のff-1が作りやすいからいつか作ろうと決めていたのだが、1/43でエブロが出してくれたので一安心。
また、A14型ff-1スポーツセダンの専用色として、1969年の発売時に追加されたこのサンビームイエローの他、スーパーデラックスとスポーツセダン、それにスーパーツーリング専用色であるアストラホワイト、スバル1000からのキャリーオーバーであるトロピカルレッドの全3色がリリースされたのは、スバリストにとっては朗報である。
さすがに国内の1/43スケールでは大御所のエブロの商品だけに、全体的なプロポーションの捉え方や、ライトと件のフロントグリル周辺ののモールドもくっきりしていて、ミラーやルーフアンテナ、ホイールキャップの他、タンポを使ったディティールの再現もとてもシャープで、安心感のあるすばらしい出来映えである。 |
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ただ、ff-1オーナーとしては、あえて難点を指摘させて頂きたい。
これは前回のノレブ製のスバル1000があまりにもうまく再現できているだけに却って目立ってしまうのだが、リヤウィンドウ下端とトランクりッド中央のボリューム感を強調しすぎている点である。
それは次のカットを見てもらえればお分かり頂けるだろう。 |
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ここは特に気になる点で、斜め後方から見たときに妙にコロッとした雰囲気に見えてしまうのだ。
また、リヤガーニッシュ左側の”ff-1”オーナメントは見事に再現されているのに、右側にあるはずの”Sports”オーナメントがオミットされているのは一体どうしたことだろう?取材した実車にたまたま付いていなかったのだろうか?
スバリストにとっては垂涎ものの大切なディティールだけに大変惜しまれるところである。 |
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もうひとつは、標準型とは違うマフラーのステイまで大変丁寧に再現された裏板なのに、インボードブレーキが標準型のフィン付きドラムとなっている点、そして、スバル1000/ff-1スポーツ系の特徴である、デュアルエキゾーストが標準型のシングルとなっている点だ。
本来スバル1000/ff-1スポーツ系の排気系は、下図の通り、前方1,2番シリンダー、後方3,4番シリンダーのエキゾーストマニフォールドがそれぞれ等長で繋げられて、左右のサイドシル下のエキゾーストパイプから後部サイレンサーに導かれる構造になっている。
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裏板自体は普段は台座に固定されているわけで、外してひっくり返さなきゃ分からないよ、といわれればそれまでなのだが、なんとなくエブロのこのクルマに対する「愛」の度合いが透けて見えるような気がしてならないのだ。
たとえば、KPGC10やMF10だったら、こんなことはしなかったのではないだろうか。
室内の再現性も充分で、ウッド風ステアリングとシフトノブ、クラッシュパッド一体式の3連メーター、ff-1スポーツ系の「お約束」である、センターコンソール、あるいはシートの畝など、きっちり魅力的な世界が凝縮されている。
フニャリとした掛け心地の座布団シートにお尻を下ろして、シフトノブを左右に動かしてニュートラルであることを確認して、ウッド風リムに左手を添えて前かがみになりながら、ステアリングコラムの右のイグニションを回すと、カチカチカチ・・という電磁ポンプの作動音の後に、あのむせび泣くような甘美なボクサーサウンドが轟く・・・。
あ〜もうダメだ。ガマンデキナイ。早く1300Gスポーツのエンジンオーバーホールしよっと。 |